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2007年11月27日

アイ・アム・レジェンド

ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(NOTLD)」が「アイ・アム・レジェンド」の影響下に作られたという話は聞いていたが、「アイ〜」末読な上その映画化作品も未見だった私。
今回初めて「アイ〜」に接し、マシスン好きというより、むしろゾンビーズとして今まで「アイ〜」を蔑ろにしてきた自分を恥たい。

前にも書いたけど、これはゾンビ好き必読の書である!

何故なら、「NOTLD」に始まるロメロゾンビにとどまらず、「スナイダー版ドーン」や「28日後・・・」の[走る系]、「えじき」「ランド」で提示された[考える系]のあらゆる要素をすでに備えているだけでなく、さらに「その先」までも描いた、とんでもない代物でした。
これが1954年、私が生まれる16年も前に書かれていたなんて・・・全員、マシスンに敬礼!!

しかし、ここはまず、ゾンビーズとして、ロメロ御大にフォローを入れておこう。
ゾンビを意思のないノロマ(従来のゾンビ像のまま)に設定したのは、紛れもなくロメロの功績です。
だからこそ、あの緩く倦怠に満ちた重苦しい絶望的なドラマが生まれたのだから。
「アイ〜」を読めばわかりますが、似たような状況でも両者の孕む緊張感はかなりトーンが異なります。

ゾンビは四六時中フラフラしてるけど、吸血鬼は日中は出没しないし、「ゾンビ」は生き残った人々=社会の縮図なわけだけど、「アイ〜」の孤独な主人公に社会性の投影はないとか。
実際ないわけではないのだけど、そこは『アイ〜』が結局[社会]の変容ではなく[人類]を描いている(=ホラーではなくSFにカテゴライズされる)部分で、そのベクトルはかなり異なる。
主人公に感染の危険性がないのも、特に大きな差かもしれない。

群像劇でない分、主人公の感情の起伏自体がサスペンスで、こういうのマシスンは本当に巧い。
さっき芽生えた楽観が、ささいな事で焦燥あるいは恐慌に転じる主人公の内面は、本当にハラハラして見てられなくなります。
孤独と恐慌を書かせたらマシスンは絶品です。
(今回の翻訳では三人称から一人称の激昂への文の流れがイマイチ硬く、そこがちょい残念)

回想シーンとして、社会が吸血病で崩壊していく過程が(部分的ながら)描かれているのも興味深い点です。
ゾンビ物は(ほとんど映画なので予算の問題が大きいんだと思いますが)崩壊後、あるいは末期から始まるのが殆どですからね。

また、その結末に対する両者の姿勢も違います。
そこらへんは上でもちょっと触れましたが、「ゾンビ」があくまでホラー、あるいは現代への風刺劇の範疇にあるのに対し、「アイ〜」がSFにカテゴライズされることにも表れています。
とはいっても、それはSF的ガジェットでオチがつくというのではなく、マシスの視点が「現状」ではなく「その先」を見据えているからに他ならないわけですけど。
(あと、別にホラーよりSFが上と言っているわけでもありませんので、念のため)

ともかく、ゾンビ好きは読んでおいて損はない小説です。オススメだよ!
私が薦めるにしては比較的入手しやすいと思いますので(笑)是非!
IamLegend.jpg
リチャード・マシスン「アイ・アム・レジェンド」(早川文庫)
(一応、ネタバレにならないように頑張ってみました!う〜ん、やはりバレなしは書きにくい^^;)
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それにしても、映画版が楽しみなのと同時に不安です。
あのラストは絶対メジャーハリウッド作品じゃ無理だろ・・・と思ってたら、なんか急遽ラストが撮り直しされたとか。
う〜ん、不安。
予告編を見る限り、最初は吸血鬼の存在を主人公が知らないようにも見えるけど・・・アレはあえて「昼間」のフッテージだけを繋げたのかな・・・

「昼間」の主人公のある「作業」とか、映像で観たら凄まじく凄惨になるけど、そこらへんはどうなのか・・・

パートナーにわんこがいることからも、結構改変されてるかもしれませんが・・・いや〜、原作読んでると、パートナーに元気なわんこがいるだけで嬉しくって泣いちゃいますね!
原作のあそこはね、ホント泣いたもの・・・
逆に、あのあたりのシークエンスがない(かもしれない)のは凄く残念ですけど。
あそこが忠実に映像化されたら「ホラー映画で号泣」が実現したかもしれません。

主人公からして職業が科学者(ん?医者だっけ?)なので、吸血病(映画だと化学兵器だっけ?)の解明に対するベクトルが大きくなるのかな?
(アッサリとワクチン開発→ハッピーエンドとか勘弁ね)

とまぁ、色々気になって仕方がないので、映画「アイ・アム・レジェンド」は年内の観賞予定映画リストの最優先事項なのです。
これで年明けに「28週間後・・・」と繋げられれば流れとしてベストっすね!ゾンビーズ的にw
posted by るしは at 00:00| Comment(4) | TrackBack(2) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ホラーとSFの差違に関する考察が
鋭いです。「社会」と「人類」とか。
ワンコのくだりはホント主人公に
感情移入してしまいます。
奥さんや娘さんの思い出のシーンよりも。
ワンコが「最強ビースト君」に改変されて
たらイヤですね。吸血鬼をいてまえやあ!
「クライモリ」はるしは様がコメント
してらした通り、足の傷を無効化して
ました。日本語吹き替えが攻殻の「クゼ」
の声優さんだからPKF仕様の完全義体で
自己修復したんやな。もっとじっくり
「お宅拝見」「冷蔵庫チェック」したかったのに、殺人鬼のお家に居る時間が
短かったのが残念です。
Posted by 奈良の亀母 at 2007年11月27日 18:13
るしはさん

私、「地球最後の男」名義時代に読みましたw
傑作ですよね。
新訳だし、店頭で手に入らなくなる前に買っておこうかな。

衝撃のラスト・・・。
ウィル・スミス主演であのやるせなさが出せるかどうか、不安ではありますが、期待してます。

ところでへストンの「オメガマン」は未見なんですが、ラストは原作と同じなんですか??
Posted by kurosui at 2007年11月27日 19:26
>>奈良の亀母さん
お褒めいただいて嬉しいです。
まとまりのない感想になったなぁ、と内心ビクビクしていたもので。

>ワンコが「最強ビースト君」に

…それはそれで観てみたいかも(笑)

>PKF仕様の完全義体で自己修復

それなら納得ですね!
「お宅拝見」私ももう一息欲しかったです。
でも、「仲間が解体されてる様子を息をひそめて見ていなければならない」という状況は、数ある人食い一家モノの中では好きなシチュエーションですよ。
あれで彼女が生きてたら「オフシーズン」に迫れたのに!
(そのかわりビデオスルーになったでしょうけど^^;)
Posted by るしは@管理人 at 2007年11月28日 14:11
>>kurosuiさん
>私、「地球最後の男」名義時代に読みましたw

おお!「先輩」と呼ばせてください!!
kurosui先輩は古典にも抜かりがないなぁ。素晴らしい。
(というか私が古典蔑ろにしすぎなんですが)
これはもう、kurosui先輩には新訳版を買っていただいて、比較レビューをしてもらわなくっちゃ!

>ラストは原作と同じなんですか??

実は、どちらも未見なんですよ…私もとても気になってます。
誰か観た人いませんかねぇ。
Posted by るしは@管理人 at 2007年11月28日 14:18
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Excerpt: 映画・ア行 アイ・アム・レジェンド (2007) 今回の映画は、「アイ・アム・レジェンド」です。 本作「アイ・アム・レジェンド」は、自分以外の全ての人類が絶滅した近未来を舞台に、...
Weblog: 公開映画「やわらか映画」
Tracked: 2007-12-14 18:43

「アイ・アム・レジェンド 」予告は詐欺映像だった?でも面白かった
Excerpt: 「アイ・アム・レジェンド 」★★★☆ ウィル・スミス 主演 フランシス・ローレンス 監督、アメリカ、2007年、100分 (以下、内容に触れていますので、見終えてから読むことを勧めます) ..
Weblog: soramove
Tracked: 2008-01-09 07:42
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